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インコの換羽

インコには鳥類が持つ「換羽」という生理現象が発生します。

換羽で羽が抜けているセキセイ

この記事では、その「換羽」についてまとめてみました。

何より初めにお伝えしたいのが、換羽期にありがちなのが、飼い主の「慣れ」による愛鳥の体調不良の見落としです。

換羽は、大変多くのエネルギーを消耗するため、身体の小さなインコにとって命懸けの生理現象です。少しの体調悪化でも生死に影響する可能性が高いため、「元気がないのは換羽だから」「そのうち元に戻るよ、いつも大丈夫だから」と、油断しないようにしましょう。(私自身の反省→「関連リンク「セキセイれもん「換羽」危機」

※本記事は一般的な事象について記載しています。実際は個々の個体差が大きいことを予めご了承ください。

換羽とは

鳥が古い羽を新しい羽に置き換える自然な生理現象のことです。その特徴をご紹介します。

羽の劣化防止が目的

換羽期に入ると、古い羽が抜けて新しい羽が生えてきます。新しい羽はツンツンした筆毛と言われる状態から徐々に伸びていきます。鳥はこのようにして、古い羽が劣化して機能を果たせなくなる前に、新しい羽に置き換えることで、飛行能力や保温性を維持します。よって換羽は、鳥の命を繋ぐとても重要な生理現象となります。

ツンツンしている羽が「筆毛」

定期的に発生

換羽は、春と秋など季節ごとや、一定のサイクルで行われ、多くの鳥にとっては年に1~2回行われます。換羽の期間そのものは1~2週間くらいです。ただし、個体差が大きいので注意が必要です。換羽が長期間ダラダラ続いてしまったり、一年に何回も繰り返したりという事例がよくあります。あくまで傾向ですが、必要以上に栄養豊富でケージ内の温度変化が少なく過保護環境のケースでは要注意です。

我が家のセキセイインコの換羽は、だいたい2週間程度続き、胸の柔らかい小さな羽が毎日数枚抜けます。大きい尾羽や風切り羽は、二週間のうちに数枚が抜けるイメージです。

換羽はもちろん文鳥にも発生します

エネルギー消費が大きい

新しい羽を生やすためには大変多くのエネルギーが必要で、この期間は活動が減ることが多いです。日中でもよく寝たり、休んでいることが目立つようになります。また、大きなストレスを抱えるため、普段とは異なる気性の変化が起きます。

眠る時間が多くなります
ストレスで攻撃的になる子もいます

種類・個体差によって異なる換羽パターン

鳥の種類や環境によって、換羽のパターンや期間、方法が異なります。一度にごっそりと多くの羽が換羽される場合もあれば、部分的に行われる場合もあります。インコは部分換羽が一般的ですが、とにかく個体差の影響は大きいです

上2枚がセキセイ、下3枚がウロコの羽

換羽に向けて準備しておくとよいこと

換羽に限りませんが、事前に準備しておくといざという時に慌てなくて済みますので、最低限、次のポイントを確認しておきましょう。

栄養強化の準備

換羽期には特に栄養バランスが重要になります。あらかじめビタミン類、タンパク質を作るアミノ酸類、ミネラル(カルシウム等)類を含んだサプリメントを用意しておきましょう。ネクトンBIOなどを飲水使用するのがおすすめです。関連リンク「サプリメントは飲水で」

左がネクトンBIO(右のネクトンSは換羽期以外に使用)

高品質なペレットやシードミックスを通常のエサに混ぜるのも効果的ですが、インコは食べ慣れないものは口をつけるまで時間がかかる可能性が高いので、事前に慣らしておくようにしましょう。

また、パワーフードの準備を強くおすすめします。パワーフードとは、極端に愛鳥の食欲が落ちてしまった際でも、口をつけてくれそうなエサ(もしくは代用食物)のことです。とにかく口をつけてくれさえすればよいという発想なので、カロリーや糖分など、多少の栄養バランスの悪さには目を瞑ります。関連リンク「パワーフードの重要性」

↓こちらはパワーフードで命を繋いだときの動画です。

パワーフードに助けられました

静かな環境作りの準備/見守りカメラ

ストレスを減らすために、静かで落ち着いた場所の確保や、大きな音を遮断する工夫など、インコがリラックスできる環境を整えておきましょう。おすすめは、ケージ全体を覆う大きめの布やバスタオルです。光や音を遮断する厚手のタイプと、薄手のタイプの二種類あると重宝します。光や外界の音の加減を調節してあげるためです。(専用のおやすみカバーがある場合でも、緊急時のプラケースに活用するなど何かと重宝します)

愛鳥がストレス状態になると、飼い主が四六時中監視していることを、嫌がる場合もあります。また、飼い主に対して「体調不良を隠す」ことも考慮すると、見守りカメラを設置・準備しておくと何かと役立ちます。

関連リンク「見守りカメラ」

温度調整の準備

愛鳥のケージにヒーターを設置していない場合(エアコンのみで温度調整している場合など)、この機会にヒーターと温湿度計の準備をご検討ください。愛鳥の体調が極端に悪くなることもあり、緊急的にケージ内の温度を30度以上に上げる必要が発生する場合があるからです。

衣装ケースなどを用いて、簡易的な保温場所を作るなどが考えられますが、やはり温度が不足してしまいます。また、その他の代用品での保温は火災のリスクも怖いです。

なお、普段のケージ内温度を把握しておくことも重要です。実際に換羽期に対処する際の目安としましょう。関連リンク「温度計は上下ふたつがおすすめ」

また、緊急時には、ケージ内に小型のプラケースを設置して、あえて愛鳥の移動を制限することで体力温存を図る方法もあります。いずれにしてもプラケースは用途が幅広いので、小型・中型など大きさ別に常備しておくことをおすすめします。

関連リンク「プラケースはメリットばかり」

また、使い捨てカイロ(貼れるタイプ)も常備しておくとよいです。(後述)

※意図的に自然に近い環境で飼育している場合でも、万が一のために何らかの保温ツールを準備しておくことをおすすめします。

鳥専門医・セカンドオピニオン/協力者の確認

換羽期に異常が見られた場合に備えて、信頼できる鳥専門医の連絡先を確認し、いつでも相談できるように準備しておくことが大切です。また、定期的な健康診断を受けることも検討しましょう。

また、愛鳥が元気なうちに、セカンドピニオンを決めておく(候補だけでも)ことも強くおすすめします。かかりつけの鳥専門医がいつも連絡がつくとは限りませんので万全を期しましょう。その際、休診日が異なることのチェックは必須です。

また、愛鳥の対処を自分一人で行うより、家族や友人、知人などと協力しながら進める方が何倍もスムーズです。万が一に備えて、協力者の確認をしておきましょう。もちろん、事前に愛鳥を協力者に慣らしておくことも忘れないようにしましょう。

愛鳥が換羽期に入ったら

栄養バランスの調整

換羽期には新しい羽を作るために多くの栄養が必要です。特に、タンパク質(アミノ酸類)、ビタミン、ミネラル(カルシウム)を豊富に含んだ食事を与えることが重要です。ネクトンBIOなどのサプリメントを飲み水へ溶かして使用する無理なく摂取出来て効果的です。

ストレス・エネルギー管理

換羽期はインコにとって身体的に負担がかかる時期です。静かな環境を提供し、ケージの移動や新しい家族やおもちゃとの接触は控えて、ストレスを極力避けるようにしましょう。また、多くのエネルギーを必要とするため、放鳥も見合わせた方がよいです。もちろん、放鳥しないことで愛鳥のストレスがたまる場合はその限りではありません。バランスよく対処してあげましょう。

放鳥する場合は短めで・・

適切な温度管理

新しい羽がまだ完全に生え揃っていない間は、とくに保温機能が弱まるため、ケージ内の温度を通常より高めに保つことが重要です。普段の温度を目安にして、1、2度高めの設定をおすすめします。

なお、夏場は湿度にも注意が必要です。日本の場合、何も対策をしないとケージ内の湿度が80%を超えてしまう場合もありますので、エアコンやヒーター、ケージカバーや布などを工夫して、ケージ内の温度は普段の1、2度高め、湿度は60%前後を保つようにしましょう。

過剰な抜け羽の監視/見守り

換羽による羽の抜け落ちは通常のできごとですが、もし異常に多くの羽が抜けたり、抜けた羽が再生しない場合、そして羽軸が黒ずんでいる場合は、健康に問題がある可能性があるため、鳥専門医に相談しましょう。とくに羽軸の点検は普段あまりできないため、換羽期にしっかり観てあげましょう。

不在時の見守りカメラのチェックは、意識的に回数を増やしましょう。

最も注意すべきは「鳥は病気を隠す」・・

最も注意すべきは、鳥は体調が悪いことを本能的に隠そうとするので、愛鳥が換羽期に入った時は、普段以上に隅々まで観察するようにしましょう・・・体重は必須として、糞の色眠っている長さ抜けた羽の量時刻などをメモや写真で観察メモとして残しておくと変化に気づきやすいですし、万が一病院に相談する際、診断の判断材料となります。

換羽で辛いれもん先輩の状態に全く気付かない飼い主・・向こうで心配そうなひすい

万が一の時には

速やかに鳥専門医に相談

愛鳥が万が一の事態になってしまったら、信頼できる鳥専門医にすぐに連絡を取り、症状を詳しく伝えましょう。その際、観察メモが役に立ちます。小型のインコは、たった数時間であっという間に症状が悪化してしまうので、あれ?おや?と思ったら躊躇せず、できるだけ速やかに行動するようにしましょう。その際、いつものかかりつけの専門医の対応が難しい場合、セカンドオピニオンの準備があるかないかで、対処時間に大きな差が出ます。その時間差が愛鳥の生死を分けてしまう可能性もあるため、普段から慎重に準備を進めておくことをおすすめします。

温度管理

体調が悪いときは体温調節が難しくなるため、ケージの温度を適切に保ちましょう。少し温かめの環境(普段の温度より2~3度高く、約25~30℃/湿度60%程度)を維持し、くれぐれも冷えすぎないように注意します。参考:我が家では体調に不安があるときは、30度保温が定番です。

※ケージ内に小型のプラケースを設置して、止まり木などへの不要な移動を回避し体力を温存させる手段も検討しましょう。体調が悪くても「病気してないアピール」しがちな小型インコには、とくに慎重な対処が必要です。

※緊急時対応として、ヒーターやエアコンなどが無い場合、使い捨てカイロをプラケースの外側側面に貼りバスタオルでくるむと、ある程度の保温効果が期待できます。(ただし密閉すると酸欠になるため空気の流れをしっかり確保すること)この方法は下記の写真のように、車で移動するときにも活用できます。

プラケースは大活躍です

わかりにくいですが、ソフトタイプのクーラーバッグを横にして、プラケースを収納し、さらにバスタオルで保温しています。

関連リンク「プラケースはメリットばかり」

ストレス軽減/協力者の支援

鳥専門医の診断を待つ間、どうしても時間がかかる場合や、病院への移動時なども、できるだけ愛鳥が落ち着いて休めるように、騒音、他のペット、人の出入りなどには注意しストレスの軽減を意識しましょう。なお、診察時の愛鳥の移動には、小型のプラケース、大型の布が活用できます。

また、自分だけで対処するのではなく、家族や友人、知人などの協力者の支援を積極的に仰ぎましょう。どうしても愛鳥から目を離さなければならない場合は、見守りカメラも最大限活用しましょう。

見守りカメラをケージの真上に設置して観察中

※見守りカメラをケージに直接備え付ける場合、インコは過度なストレスを感じる可能性もあるので、無理のない範囲で進めてください。関連リンク「見守りカメラ」

栄養補給とパワーフード

愛鳥の様子がおかしい場合、大抵食欲が落ちていますが、最低限の栄養補給は必須です。とくに、濃い緑色の糞が出た場合は、絶食状態が疑われますので、なんとかして栄養補給に取り掛かってください。鳥専門医の診察を一刻も早く受診することが何より重要ですが、それでも間に合いそうにない場合は、次の方法を検討してください。

➀パワーフードを与える

②プラケースに入れて撒き餌をする

③夜も明るくして、いつでも餌を採れるようにする

④30度レベルの保温で様子を見る

⑤新鮮な水も必須

関連リンク「パワーフードの重要性」

なお、エサを口元に持っていって愛鳥の意志で食べさせるのはよいですが、「強制給餌(口を開けて幼鳥用のパウダーフード等を流し込む)」は、体力を失っている愛鳥に逆にダメージを与えるリスクがあるため、鳥専門医の指導の下で行うことをおすすめします。

これらの対応は一時的な対策であり、鳥専門医の診断と治療を受けることが最も重要です。

また、本記事は一般的な対処であり、インコ種類や個体によっては当てはまらない場合もあります。くれぐれも飼い主様の責任において対処願います。

おまけ

最近はあまり耳にしませんが、以前は換羽のことを「とや」とも言っていました。とやは「鳥屋」と書きます。鷹などの猛禽類は換羽期になると、鳥小屋に入って過ごすことから、鳥屋入り(とやいり)と言われ、そこから換羽のことを「とや」と言うようになった・・のだそうです。猛禽類の換羽って・・迫力ありそうですね。

関連リンク「セキセイれもん換羽危機」

関連リンク「見守りカメラ」

関連リンク「パワーフードの重要性」

関連リンク「プラケースはメリットばかり」

関連リンク「温度計は上下ふたつがおすすめ」

関連リンク「サプリメントは飲水で」


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