れもんのPBFD闘病に始まり、インコ飼育のことを勉強すればするほど、愛玩小鳥の飼育は感染症との闘いの歴史であると気づきました。
そこで、感染症について整理してみました。
小鳥飼育における感染症の実態
「感染症」と聞くと、新型コロナウイルスが最も聞き覚えのある社会的認知の代表例ではないでしょうか。そして、世の中に「ワクチン」という言葉も同時に浸透してきました。感染症は怖いがワクチンがあればなんとかなる、という社会的なイメージに違和感はなくなりました。
愛鳥を守る方法はただ一つ
ただ、鳥には犬や猫と違って感染症予防のワクチンがありません。なので、愛鳥を守る方法はただ一つ「早期発見・早期治療開始」しかありません。
そのために、お迎え直後のDNA検査や、定期的な健康診断がとても重要となります。
また、小鳥は弱みを見せないため、普段の観察では飼い主でさえも気づくにくいことも早期発見を遅らせてしまう原因と言われています。
我が家では、糞や脱落した羽の異変に気付きやすいよう、ケージ内にキッチンペーパーを敷いています。れもんの治療以降、このスタイルはずっと継続しています。衛生面での掃除が大変ですが。
主なインコ(オウム類)の感染症
ワクチン開発が待たれる代表的な「インコ(オウム類)の感染症」をまとめました。
オウム類のくちばし・羽毛病(PBFD)
サーコウイルスの感染によって発症し脱羽などの羽毛障害と、くちばしの変形があります。最も怖いのは、免疫不全による他の病気の二次感染です。主に3歳以下のインコ類の罹患率が高く、治療法が確立していないため致死率も高い難病です。早期発見によるインターフェロン投薬が唯一と言っていい治療法となりますが効果は不明瞭です。
マクロラブダス症(AGY/メガバクテリア症)
真菌の感染症です。多くの鳥の胃の中にいる微生物の感染による疾病で、慢性化するとなかなか完治しません。進行すると、食べても食べても未消化となり瘦せてしまいます。カビの仲間のため、日々の消毒が有効です。早期発見できれば治る可能性も高いですが遅れると長期治療が必要になります。
セキセイインコのヒナ病(BFD)
ポリオーマウイルスによる感染症で、幼鳥は発症しやすく進行も早いです。羽毛障害が発現しますが、急性の場合、皮下出血や消化器異常などが見られ幼鳥の場合致死的な深刻な状況になります。PBFDと同じような羽毛障害となりますが同時罹患も少なくないようです。
鳥のクラミジア症(オウム病)
細菌クラジミアの感染より発症し、人にも感染する「人獣共通感染症」で、多くの年齢層のインコ(鳥類)が感染します。食欲不振、下痢、鼻炎、呼吸器症状などの症状があり、死亡する場合もあります。抗生剤の長期投与で治療します。
これらの感染症の対策の第一段階は、愛鳥が罹患しているかどうかを知ることです。とくにインコをお迎えした直後は、DNA検査は必須です。いずれもワクチンがないため、早期治療を行うことが最も有効な治療スタンスとなります。
PBFD物理的負担と精神的負担
PBFDは、親からの遺伝である垂直感染と、接触や空気による水平感染の両方で伝染します。そのため、複数のインコを飼育している場合は、病鳥の徹底した隔離(感染拡大防止策)が必要となります。
感染防止策は、新型コロナウイルスの家庭内感染拡大を防止する場合と同様に、あらゆる接触物の消毒を伴うため、病鳥とそうでないインコの共有物を極力減らし、病鳥専用に改めて準備することが近道となります。お世話する際の服なども別管理がのぞましいのです。それが物理的な負担です。
また、将来不安や日々の消毒作業など、気が抜けない闘病生活において、適切なアドバイスがもらえる相談先などがない場合、飼い主自身が追い込まれてしまいかねません。これが精神的負担となって少しずつ悲しく辛い日々の連鎖となってしまいます。
〔私の場合・・〕
同時期に飼っていたセキセイのまりんは、その様子から抗体を持っていると推測されましたが、念のためれもんとはあらゆる共有物を別管理にしました。しかし、そもそも消毒の方法や感染症自体の怖さを正しく理解していなかったこともあり、今思えばかなり大雑把な感染対策でした。自分なりに頑張ってはいたのですが・・
その後、PBFDの病鳥さんに真摯に向き合っている方々の体験記に接する機会があり、大変なご苦労の中闘病されていることを知り、自分の過去を顧みてとても反省しています。もしかしたら、まりんは既に罹患していて、産卵と共に発症し、他の病気に二次感染して命を落としてしまったのではないかと・・後悔しかありません。
〔PBFDを引き起こすサーコウイルス〕
元々サーコウイルスはインフルエンザウイルスと同じように、普段から空気中に漂っていて体内に入り込みます。さらに細胞内で増殖した状態を感染と呼び、発症しなくてもキャリアとなる場合があり潜伏期間は数年に及ぶ事例もあるそうです。それを聞いてしまうと、病鳥がいてもいなくても・・と考えてしまいそうになりますが、クラスター感染を防ぐには、やはりきちんと拡大防止策をとることが重要になるのです。
PBFD予後(病鳥の見通し)
罹患したインコの治療~予後に関して少し整理しました。
・陰転(克服)するケースも増えてきていて、陰転率49%という情報もあります。
・治療は、病徴の免疫力を上げる(賦活と言うそうです)試みとなります。
・特効薬はなく、ワクチンはアメリカで開発済みなのに市場には出ていないそうです。うーん・・大人の世界の事情なのでしょうか?切実に何とかしてほしいと思います。
・発症しても、飼い主さんと病鳥さんの努力で、何年も生存し続けている子も少なくないようです。
・早期発見が適わない場合、回復が難しいと言われています。やはり早期発見が重要です。
愛鳥のちょっとした仕草に感動する日々
できたことができなくなる
できなくなったことがまたできるようになる
やってあげたいけどやりきれない
明日の不安
たくさん悩み、たくさん泣き、たくさん想う
そして、その仕草ひとつひとつに「生きる力」を再発見する
そして元気をもらってまた朝を迎える
今日もまた新しい発見をしよう
あすなろ
PBFD治療費
私の調べ方が悪いのか、ほとんどPBFDの詳細な治療費の記事をお見かけしませんので、我が家の場合を参考例として掲載します。1回ごとの実際の金額を含め、全ての診療費がこちらです。
陰転までの診療費は合計、16万3,327円、1回当たりの平均が6,805円(全24回通院)となりました。・・・しみじみ・・・れもんはもちろんのこと、諸々よく頑張ったなあと思います。
※なお、その後も健診やレントゲン、DNA検査など定期で実施していますがここには含んでいません。
費用負担は避けて通れないことです。実際に、思わぬ大きな診療費に驚かれて、悩まれた挙句、具合の悪い愛鳥さんを治療されずに病院を後にする方を、何度も目の当たりにしました。とても切ない現実です・・
PBFD診療費明細(全期間)
見やすさを考慮して全体の費用と主な診療明細を併記しました。なお、診療費は病院によって条件含め異なりますことをご了承ください。
社会的認知と大切なこと
動物の愛護及び管理に関する法律
第7条には、飼い主などの責任として「動物の健康及び安全を保持するよう努める」「動物に起因する感染症の疾病について正しい知識を持つ」と明言されています。ここで言う感染症は、人間との共通感染症のことを主に差していますが、
・動物の健康を守りましょう
・感染症の知識もしっかり身に着けましょう
・それらは飼い主の責任です
と解釈して間違いありませんので、インコ(小鳥)に限らず日本において全てのペット飼育者は、このことにきちんと向き合わなければならないということです。
ちなみに動物愛護に関する法制定の歴史は、日本が海外を追いかけているのが実情ですので、先進国を中心とした各国の関係法令は日本以上にもっと厳しいです。ペットの売買を大きく制限している国(ドイツ、イギリス、アメリカ、フランスなど)が増えてきています。
ワクチンって
狂犬病予防のワクチン接種は法律で義務化されています。また、犬や猫の感染症予防のワクチンは、多種多様に揃っていて獣医師と相談できる環境が整っていると言えますが、愛玩小鳥飼育の業界には、そもそもワクチンという考え方がありません・・大きく水をあけられている状況です。
要因のひとつは、鳥をケアする医療業界が犬や猫と比較にならないほど拡充していないことだと言えます。そもそも鳥を診られる病院が少ないこと、なぜ少ないのか?それは経営が難しい(お金になるならないという意味)からだと聞く機会がありました。実際にその動物病院数は犬や猫と鳥では何十倍もの圧倒的な差だそうです。身近な感覚としても実感できます。本当に鳥を診られる病院は少ないです。
愛鳥家としてすべきこと
それを悲観していても始まりません。
今私たちにできることを考えることが大切です。
それは、
・飼い主の責任において感染症の正しい知識を見つけていくこと
・早期発見により愛鳥の負担を減らすこと
なのだと思います。
まずは、
・私たち愛鳥家同士の感染症そのものの情報交換
・愛鳥家による感染症への正しい理解
・それらを踏まえた特効薬の開発支援
こそが、
いずれ「鳥の感染症ワクチン開発」に結び付いていくのだと思います。
克服したからこそこの経験をもとに、私も私にできることを進めていきたいと思います。
長文、読んでいただきありがとうございました。